モルディブ小学校隊員の日記 〜今日の空振りは明日への素振り〜

青年海外協力隊モルディブ小学校教育隊員の日記です。がんばります。

国を越えて ~映画「南の島の大統領 -沈みゆくモルディブ-」を観て②~

  今年もいよいよ残り3日となりました。モルディブは相変わらず年末感はなく、いつも通りののんびり、というよりダラダラとした日が続いております。

 

 少し時期が過ぎてしまいましたが、今月2日から2週間の会期でスペインのマドリードにおいてCOP25が開催されました。来年1月に迫ったパリ協定の本格始動直前の最後の会議ということで、温暖化対策についてのより積極的な取り組みを示せるかが一つの焦点となりましたが、2日間の延長にもかかわらず当初期待されていたような合意には至らず、残された課題は来年以降に持ち越しになりました。

 詳しい内容については割愛しますが、以前から問題になっていたように、アメリカが協定から離脱することもあり、脱炭素社会に向けての国際的な取り組みに水を差すような形になってしまったようです。

 (会議の合意内容等について以下のページに今回の会議のポイントがまとまっていますのでよろしければご覧ください)

www.nies.go.jp

 日本では化石賞を受賞しただの、環境相の話がどうだのと少しずれたことが話題になっているみたいですね。日本がどう思われているかばかり気にしているというか。

 モルディブはこの協定如何によっては国がなくなるということが現実に起こる可能性があるため、そんな平和なことは言ってはいられません。

 

 以前にも記事にしました(

https://katsun88.hatenablog.com/entry/2019/08/24/213117

)が、このパリ協定にも謳われている「長期的には2度以下に気温上昇を抑えることを目標に各国は1.5度以下の気温上昇幅に抑えることに努力する」という合意に向けてモルディブの元大統領モハメド・ナシード氏も各国の首脳との交渉を進めていました。

 もし2度気温が上昇したら国土がほぼなくなってしまうモルディブにとって、この目標に向けて明確な答えが見いだせなかった今回の会議に対する落胆は大きかったことと思います。実際にモルディブも参加している44の島国からなるAOSIS(小島嶼国連合)はCOP25の結果に対して落胆の意を示す声明を発表しています。(

https://www.aosis.org/2019/12/15/cop-25-aosis-closing-statement/

 

 

 モルディブの多くの島では現在進行形で護岸工事、埋立工事が進められています。埋め立てられれば、サンゴを始めとした周辺の生態系に影響が出てしまいますし、美しい景観も失われてしまいます。

 はたから見れば、「美しい自然を破壊するなんてもったいない」という感想も出てくることでしょう。違う問題も含まれていますが、沖縄の米軍基地の辺野古への移設に対する世間の反応を見るとそれはわかると思います。

 

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首都マレ近くの人工島フルマーレ。今も島の拡張が進んでいます。

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地島でも埋め立てが進んでいます。

 映画の中で、あるローカル島の住民が大統領に対して、島の浸食を食い止めるために護岸工事を進めて欲しいということを訴えている場面がありました。生活の場が奪われるという問題に直面している住民にとっては自然保護などと四の五の言っていられないところまで来ているのでしょう。

 一方で、こういった工事がモルディブの主要産業である漁業と観光業に大きな影響を及ぼすことは避けられません。

 

 このようにモルディブは「自然環境を破壊したくないけれど、生活のためにはやむをえない」という状態にいます。特に生態系の変化は死活問題になります。

 モルディブでも環境教育は少しずつ進んでおり、各種の啓発も行われていますが、正直なところ国内での対策は限界に来ているのが現実です。

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少しでも環境問題に目が向けられるとよいのですが。

 「海面上昇で沈む国がある」ということは知識としては知っていました。ただ、先日の旅行の記事の内容と重なるところありますが、その問題は自分とは関係のない遠い国のこと、という感覚でした。せいぜい豪雨や猛暑が増えていて心配、という程度だったと思います。

 ですが、当事国に来て実際にきれいな海が埋め立てられているところを目の当たりにして、環境対策はもう手遅れかも、というところまで来ていることを肌で感じました。こういったことを考えることも、この国に来た意味なのかもしれません。

 

 

 では、自分は何ができるかと考えると、できるだけ多くの人、特に教員として子どもたちにこの現状を伝えることかなと思っています。きっと伝わり方が違いますもんね。

 本当に小さなことですし、現状が変わっていくかどうかは今は見えませんが、少しでも力になれたらと思っています。